2017/03/15 | 野村萬斎から学ぶイノベーション力 | 74view

#03_萬斎流「引き算」で創るクリエイティブ

クリエイションする中で、答えを全て与えてしまうのではなく「引き算」をすることで本当に伝えたいことが明確になり想像力が高まることがある。萬斎もまた、「引き算」の大切さについて考えがあった。


観る人に「考える余地」を残すこと

コミュニケーションのあり方として、萬斎は観客との距離感をどのようにはかり、伝えたいことを発信しているのか。そこには、情報過多な現代の時代背景を考慮した萬斎流の発信の仕方がある。
萬斎「それは、想像する余地を残すということですかね。最近、全部を説明し過ぎてしまっていることが多いと感じます。世界観というのは人それぞれあるわけで、演出している人の世界観に交わり共振することが一番重要かと思います。そういった自分の世界を提示していく時に『これはこうだ』と強調するだけでなく、相手に考える余地を残すことが出来れば良いと考えています」


夢を与える=「真空」をイメージした演出手法

それは決して引き離すわけではない、夢を与えられるように考え抜いた手法である。
萬斎「僕はちょっと意表をつくようなことを考えることが好きだから、『そこがゴールだよ』と思わせながら全部ひっくり返してどんでん返しをすることがあります。それまで共有していたものが急にポーンと無くなった時にゴールを見せてそこへくっついちゃうイメージです。まさに、真空を作った時にシュポン!とくっついちゃう感じでしょうか。演出家として虚構を作る・だますというか夢を与えるということはあります」




一瞬にして全観客の視線を集めるテクニック

萬斎が舞台上から客席を見る中で、一番注目されたい瞬間にどんな手法で観客を誘(いざな)うのか聞いてみた。
萬斎「それは『黙る』ことですね。うぁーっと喋って、突然黙ってニヤッと笑ったりするんです。そうするとみんなすごく想像力を膨らませ、集中力を持って観てくれますね。僕は普段、ペラペラと立板に水を流すように喋ることが多いのですが、ふと黙ってふふふと笑ったりすると、ものすごい勢いで何を考えているのだろうかと考えてくれるようです」


それは、「神のお祭り」に近づく

よくステージパフォーマンスなどを極めている人を見て「神がかっている」と言うことがある。それは、年齢と経験を重ねることで無駄が削ぎ落とされ洗練されてくるということなのだろう。
萬斎「17歳で初めて『三番叟』を披いた時は、体力を使って力任せでやっていました。年齢とともに体力が落ちていく中で逆に集中力が増して、且つ経験値も上がっているので自分を客観的に見られるようになるんです」
では、究極の領域に行くとどんなクリエイションに辿り付くのか。萬斎でも未だ見ぬその世界を想像してくれた。
萬斎「そして、その先は 瞑想的になっていくように思います。そうなればなるほど、自分の中に神を見出すようになります。より神事のような神のお祭りに近づいていく感じなんです。それは、師匠である父が先行して見せてくれるんですが、僕よりもっと体力がないので、もう無心でやっているわけです。僕は集中力と技術で見せようとするんですが、父はさらに次の次元です。ある意味、解脱した世界で無理が全くないように見えます」
それはまさに「悟りを開く」という表現に相応しいものである。





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野村萬斎

野村萬斎

狂言師。1966年、東京都生まれ。狂言師。人間国宝・野村万作の長男。重要無形文化財総合指定者。2002年より世田谷パブリックシアター芸術監督を務める。国内外の能・狂言公演や舞台・映画出演はもとより、世田谷パブリックシアターでは『まちがいの狂言』など狂言の技法を駆使した舞台や、『国盗人』(「リチャード三世」を翻案)など古典芸能と現代劇の融合を図った舞台を次々と手掛ける。芸術監督就任後初の構成・演出作『敦 ―山月記・名人伝―』では朝日舞台芸術賞、紀伊國屋演劇賞を受賞。構成・演出・出演を務めた『マクベス』は全国各地で上演を重ねるほか、海外公演(ソウル、ニューヨーク、シビウ、パリ)も果たした。

松井るみ

松井るみ

舞台美術デザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。劇団四季を経てロンドンへ留学。帰国後、舞台美術家としての活動を開始。2004年『Pacific Overtures』(宮本亜門演出)でブロードウェイデビューし、同作品デザインで第59回トニー賞にノミネート。2007年にはOISTATより“世界の最も名誉ある舞台デザイナー12人”に選出。タン・ドゥン作曲『TEA: A Mirror of Soul』(宮本亜門演出)ではオペラ界においてもアメリカ進出をはたす。さらに、2010年6月には『The Fantasticks』(宮本亜門演出)でロンドンのウェストエンドデビューを飾った。 近年は、上海公演や、AKB48の5大ドームツアー、国立競技場公演のセットデザインを手掛けるなど、活動の幅を広げている。これまでに参加した作品は400以上にのぼり、紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回・第19回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞,伊藤熹朔賞、菊田一夫演劇賞他、受賞多数。2015年より東京藝術大学の非常勤講師を勤める。

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